Vol.5
宝石を永く楽しむために
知っておきたい
硬度と靭性のはなし
ご存じのように世界で一番硬いものはダイヤモンドとされています。
ではダイヤモンド以外の宝石の硬さはどうなっているのでしょうか。
宝石業界で使われている硬さの基準はモース硬度と言われているものです。
1〜10で数値化されており、10がダイヤモンド。そこから1つずつ下がるにつれ柔らかくなっていきます。
10のダイヤモンドと9のコランダム(ルビー、サファイア)は数値では1つしか開きはありませんが、実際の硬度としては10倍ほどの開きがあります。
9以下については数値通りなだらかな差といったところです。
ではジュエリーとして使用できる耐久性を持つものは、どのような石があるのかが気になってきます。
一つの基準となるものはその昔、物品税というものが導入された時代に遡りますが「貴石・半貴石」という2種類に分けられたものです。
貴石は五大宝石とされるダイヤモンド、ルビー、サファイア、エメラルド、最後に真珠と言われることもありますがここでは硬度ですのでアレキサンドライトが当てはまります。
硬度7以上のものを貴石と呼んでいます。それ以外のものを半貴石。
そのため、表に記載のある7以下のものは耳馴染みのないものが多いかと思います。
なぜ硬度7が基準になっているのかといいますと、砂ぼこりにはクオーツが多く含まれているため同じ硬度7のクオーツ以上のものは日常使用に耐えられる宝石の基準として定められました。
硬度 | 宝石名 |
---|---|
10 | ダイヤモンド |
9 | コランダム |
8 | トパーズ |
7 | クォーツ |
6 | オーソクレイズ |
5 | アパタイト |
4 | ローライト |
3 | カルサイト |
2 | ジプサム |
1 | タルク |
一方、これだけ硬いダイヤモンドですが衝撃には弱いという性質も持っています。
ダイヤモンドを研磨する際にはこの衝撃に弱い部分「劈開」を使用します。
衝撃に弱いダイヤモンドと比べる宝石としてよく例えに出されるのが翡翠です。
翡翠は繊維状結晶組織構造と呼ばれる構造のため衝撃に強いのです。
これを靭性といいます。
あくまで硬いのはダイヤモンドですが、ダイヤモンドは靭性の面ではそこまで強くありません。
靭性とは割れや欠けに対する宝石の抵抗性のことです。
または粘り強さとも言い換えられます。
カラーストーンの珍しいものは顕著に硬度や靭性が低いものも見られます。
ペンダント・ネックレスやイヤリング、ピアスであればぶつける可能性は低いですが、先ほど申し上げた通り、リングであればどうしてもぶつけるリスクは高くなります。
購入する場合、販売員がきちんと説明をしているのかいないのかでは購入者側も気をつけ方が違います。
特に聞いたことがないような珍しいカラーストーンがセットされているリングのご購入を検討なさる場合は必ず硬度や靭性を調べることをオススメします。
折角購入したジュエリーが一度の装着で欠けてしまってはどうしょうもありません。
世界一硬いとされるダイヤモンドも欠けることがあるわけですから、ジュエリーを身に付ける際はいつもより少しだけ優雅な所作で過ごしてみてください。
気にしすぎていては使い辛いですが、美しいジュエリーを身に纏うことでいつもと違った、より洗練された自分を感じることができるかもしれません。
靭性 | 宝石名 |
---|---|
10 | カーボナード |
8 | コランダム |
8 | 硬玉/軟玉 |
7.5 | ダイアモンド |
7.5 | クオーツ |
6 | ペリドット |
5.5 | エメラルド |
5 | トパーズ/ムーンストーン |
3.5 | アパタイト |
3 | スポージュメン |
2.5 | エピドート |
表を参考にするとダイヤモンドはルビーより靭性が低い、更に翡翠より低いということになります。
エメラルドも靭性は5.5ですので割れやすいということも頷けます。
話を元に戻すと、ダイヤモンドをカットする場合はこの靭性とダイヤモンドの特性である劈開を利用しています。
劈開とは結晶や鉱物がある特定方向へ割れやすいという性質のことです。
例えばアクアマリンとトパーズ、一見するとどちらも青い石で二つ並べると、どちらがどちらなのか分からない場合があります。
仮にお手持ちのものがアクアマリンなのかトパーズなのかわからない状態だったとします。
宝飾店などのサービスで「洗浄します」と言われお願いした場合に、その石がトパーズであったらもしかすると石が割れてしまうかもしれません。
その理由はトパーズには劈開の性質があり、洗浄機の振動による衝撃に耐えきれない可能性があるのです。
以上の理由からダイヤモンドの靭性は劈開方向以外で卓越ですが、劈開方向では非常に脆いことが分かります。
つまり、ダイヤモンドも打ち所が悪ければ真っ二つに割れるということです。
そしてカラーストーンも劈開によってもわずかな衝撃で割れてしまうものがあるということです。
通常は宝石に対して衝撃を与えることはありません。
使用の際に気をつけなければならないのは何かに擦れたりする際の引っかき=硬度の部分です。
そのため宝石業界においてはモース硬度がよく語られるのだと思います。
しかしジュエリー着用時、特にリングに関しては絶対にぶつけないとは言い難いため、この靭性というものも知識として知っておくほうが良いかと思います